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マンション構造(M構造)

マンション構造(M構造)とは、火災保険の建物区分において、主に鉄筋コンクリート造(RC)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)などの耐火性能が高い共同住宅を対象とする区分です。

一般に「M構造」と略され、T(耐火)構造・H(非耐火)構造と並ぶ区分の一つです。コンクリートや耐火被覆により延焼拡大リスクが相対的に低く、同一規模・同一立地の他構造に比べて保険料が抑えられる傾向があります。集合住宅としての区画(耐火間仕切り・防火設備)や、屋内消火栓などの設備水準が総合的なリスク低減に寄与し、結果として保険設計上の優遇(料率面のメリット)につながります。

M構造の基本と保険上の位置づけ

定義・適用対象は「共同住宅×高い耐火性能」を満たすことが起点です。

M構造は、共同住宅(分譲・賃貸マンション、集合住宅)で、かつ耐火性能が所定基準以上であることが実務上の前提です。主要構造部にコンクリートを用いたRC・SRCのほか、耐火被覆を施した鉄骨造でも共同住宅の設計・区画・設備水準を満たせば対象となる場合があります。なお、同じRCでも用途が事務所主体であればM構造とせずT構造扱いとなるなど、用途・建物種別や商品設計により区分が変わる点に注意が必要です。

該当しやすい構造と判定ポイント

「主要構造部」と「共同住宅としての設計要件」の両面で確認します。

● RC(鉄筋コンクリート)造

柱・梁・床・壁にコンクリートと鉄筋を用いる構造で、区画・遮炎性に優れます。階数が多い集合住宅に広く採用され、M構造に該当しやすい代表例です。

● SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造

鉄骨を芯に入れたうえで鉄筋コンクリートで被覆する構造。耐火・耐震・剛性のバランスに優れ、規模の大きいマンションで採用例が多く、M構造の中心的存在です。

● 耐火被覆を備えた鉄骨造(S造)の一部

耐火被覆・区画・避難計画・防災設備などの総合水準が高い共同住宅は、商品設計によってM構造扱いとなる可能性があります。判定は約款・確認資料に依拠します。

● 共同住宅要件(区画・防火設備・管理体制)

各住戸の区画・防火戸・屋内消火栓・スプリンクラー・非常用照明など、共同住宅としての設備水準がリスク低減に寄与します。管理組合による維持管理水準も確認対象です。

T構造・H構造との違い

保険料の差は「延焼しにくさ」「被害拡大の抑制力」の評価差に由来します。

● H(非耐火)構造との比較

木造など可燃性の高い構造は初期延焼速度が相対的に高く、区画貫通や隣家延焼の懸念が大きくなります。M構造は主要構造部の不燃性・遮炎性により損害拡大を抑えやすいのが特徴です。

● T(耐火)構造との比較

T構造は耐火性能を満たす建物全般を指し、オフィスや商業施設なども含み得ます。M構造は共同住宅特有の区画性・設備・管理体制が前提で、同じ耐火系でも区分が異なる点に留意します。

● 料率差が生まれる背景

区画・設備・避難計画により大規模延焼の確率や損害額の分布が変わります。統計的なリスクが低いほど保険料は低位で安定し、M構造に優位な料率が設定されやすくなります。

保険料が抑えられる理由と見積の勘所

建物強度だけでなく「区画・設備・管理体制」の総合力が評価されます。

● 区画性と遮炎・遮煙の確保

区画による火勢・煙の抑止は、隣戸や共用部への延焼を遅らせ被害を限定します。結果として大口損害の発生頻度が下がり、料率面のメリットにつながります。

● 防災設備・維持管理の実効性

感知器、屋内消火栓、スプリンクラー、非常放送などが作動し、日常の点検記録が整備されているかがポイント。管理体制の成熟度は実損に直結します。

● 共用部と専有部のリスク差

電気設備や配管など共用インフラの更新状況、専有部内装の可燃性・家具配置・コンロ周りの対策など、現場差が大きい要素を確認し、見積条件の妥当性を高めます。

申込時に確認すべき資料・手順

誤判定は保険金支払時のトラブル要因。事前整備で回避します。

● 必要資料の例

建築確認通知書・検査済証、設計図書(構造概要)、仕様書、竣工写真、消防設備点検記録、長期修繕計画、管理規約・使用細則など。中古取得時は売主・管理組合からの取り寄せが鍵です。

● 判定フローの基本

構造種別・用途・階数・延床面積・防災設備の把握
共同住宅要件の充足確認
保険会社の区分基準へ適用
不足資料の補充
見積・申込という流れで整合を取ります。

● 誤判定のリスクと対処

M構造と見做して契約後、実査で該当外となれば追加保険料や条件変更が生じ得ます。早期に客観資料を揃え、代理店・管理組合・設計者の連携で確認精度を高めましょう。

よくある誤解・注意点

「鉄筋・コンクリート」という言葉だけではM構造を断定できません。

● S造は常にM構造になるわけではない

耐火被覆の仕様、区画、防災設備、共同住宅としての要件を総合確認する必要があります。仕様不足や用途相違でT構造扱い等となる場合もあります。

● 用途・混合用途の扱い

1階が店舗、上層が住戸の複合用途では、用途割合・区画・設備で評価が分かれます。約款・商品設計と整合するか事前確認が不可欠です。

● 既存不適格・老朽化への配慮

竣工当時の基準ではM構造相当でも、設備の老朽化・区画欠損・管理不全が進むと実力が低下します。点検・修繕履歴の有無は料率交渉や引受条件に影響し得ます。

マンション構造についてのまとめ

M構造は「共同住宅×高耐火」を満たす建物区分で、区画・設備・管理体制の総合評価により保険料が抑えられる傾向があります。

RC・SRCを中心とした耐火的な共同住宅は、延焼抑制・被害限定の観点から統計的リスクが低く、料率上の優位を得やすい区分です。もっとも、用途や資料不足により別区分と判定されることもあるため、構造・設備・管理の客観資料をあらかじめ整えることが重要です。

見積時は構造種別・共同住宅要件・防災設備・維持管理の実態を点検し、区分の妥当性を確認しましょう。中古取得や複合用途では特に誤判定リスクが高まるため、代理店・管理組合・設計者の連携で精度を高めることが、納得感のある保険設計につながります。