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耐火・防火認定番号

耐火・防火認定番号は、国土交通大臣の認定を受けた構造・仕様や材料に付される識別記号です。建築確認・設計仕様の証明、保険の構造確認、維持管理や改修時の適合性判断に活用されます。

認定は「構造(部位・耐火時間・工法)」と「材料(不燃・準不燃・難燃)」の二系統があります。前者は主に建物の部位ごとの耐火性能(例:外壁60分、床120分など)を示し、後者は内装制限や外装材の防火性能を示します。図面や仕様書に加え、メーカーの認定書・試験成績書・施工写真を組み合わせ、現場仕様と認定番号の一致を確認することが実務の要です。

認定制度の位置づけと基本

目的は「火災時の延焼・倒壊を抑えること」。適合した構造・材料を番号で特定し、設計・施工・審査・維持管理を通じて一貫した安全水準を担保します。

耐火・防火の性能確認は、法令・告示・技術基準に基づき、指定評価機関の試験や審査を経て行われます。承認後に交付される認定番号は「どの部位に」「どれだけの時間」「どの仕様で」効くのかを短い記号列で示すため、設計図面や仕様書に併記して使うと誤解を減らせます。

保険実務でも、耐火・準耐火・省令準耐火の適合可否、T構造/H構造の料率区分、外壁や開口部の防火性能の確認などで、認定番号・証明書の提示が求められることがあります。認定書の最新版か、適用範囲に変更がないかも確認しましょう。

耐火認定番号の読み方(構造・部位・時間)

耐火認定番号は「構造種別」「耐火時間(分)」「対象部位」「通し番号」で構成されます。
例:FP120BE-1234 のように読み解きます。

● 構造種別の記号

FP=耐火構造
QF=準耐火構造
PC=防火構造
QP=準防火構造
建物の要求水準(用途・規模・法区分)に応じて選定し、必要性能に満たない認定を流用しないことが肝心です。

● 耐火時間(分)と時間区分

数値は要求耐火時間を分で表します。
120=2時間
060=1時間
030=30分など。
要求時間が長いほど延焼・倒壊抑制の余裕度が高く、部位や用途に応じた設定が必要です。

● 部位コード(対象部位)

BE=耐力壁・外壁
BP=耐力壁・中仕切
NE=非耐力壁・外壁
NP=非耐力壁・中仕切
CE=柱
BM=梁
FL=床
RF=屋根
RS=軒裏
ST=階段
PR=ひさし
コードが同じでも工法や下地の層構成が異なれば認定の適用外になるため、仕様の一致確認が重要です。

記号の後ろに付く4桁等の番号は、個別の認定案件を特定する通し番号です。同番号に紐づく「仕様書(工法名・層構成・下地厚・仕上種別)」が適用範囲のすべてで、代替材や一部省略は不可。メーカーの最新版仕様書と照合し、現場での差異を潰しておきましょう。

防火認定番号の読み方(材料の不燃区分)

防火材料の認定番号は、材料の燃えにくさを示す区分記号+番号で構成されます。内装制限や外装材の適合確認に使われます。

● 区分記号と意味

NM=不燃材料
QM=準不燃材料
RM=難燃材料
一般に、加熱時間の目安は
不燃(約20分)
準不燃(約10分)
難燃(約5分)
で、発熱・発煙・損傷の基準を総合評価します。記号の後に通し番号(例:NM-1234)が続きます。

● 用途ごとの読み替え

内装制限のかかる用途・部分(避難経路、天井、壁等)では、要求等級を満たす材料しか使えません。外壁・軒裏などは個別に外装制限の規定があるため、部位×材料の双方で適合確認が必要です。

同じ材料名でも厚さや下地、表面仕上げの違いで認定外になることがあります。製品カタログの「認定番号」「適用範囲」「下地条件」を必ず確認し、現場仕様と照合しましょう。

図面・書類での確認ポイント

目視確認の基本は「番号・仕様・部位・時間」の一致。これに施工写真と試験成績を添えると審査が早まります。

● 設計段階の整合性チェック

意匠・構造・設備図、仕様書、防火区画図で、部位ごとの認定番号を明記。耐火区画の連続性、開口部まわりの処理、貫通部の仕様(ケーブル・ダクト)まで記述しておくと施工段階の齟齬が減ります。

● 施工段階のエビデンス化

層構成が見える段階での写真(下地材・断熱材・石膏ボード厚・耐火被覆の厚さ・固定ピッチ)、メーカー納品書、型式一覧、試験成績書の控えを保管。改修時も同等性能を担保できるよう記録化します。

竣工後は、認定の改廃や適用範囲の更新が出ることがあります。点検・改修時に最新版を参照し、既存不適合がないか、代替仕様の要否を判断します。古いパンフレットのみで判断しないことが重要です。

よくある誤解・否認パターンと対策

誤読・仕様不足・表記不整合が三大要因。提出前に「番号・仕様・写真・日付」の4点セットを点検します。

● 番号の誤読・別仕様の流用

FPとQF、BEとNEなど似た記号の取り違えは典型的なミス。メーカーの仕様書で対象部位と層構成が一致しているか、別仕様の写真を流用していないか確認します。認定は代替・簡略化が基本不可です。

● 層構成の一部不足・施工ばらつき

石膏ボード厚不足、連続しない耐火被覆、開口部の防火戸未適合など、どれか一つでも未達だと全体が不適合に。写真台帳を部位別に作成し、連番・スケール付きで保存すると説得力が増します。

所在地・家屋番号・工事名・発行日などの表記不一致や、旧版認定書の提出も否認理由になります。最新版番号か、後継番号・適用範囲の関係を補足資料で説明しましょう。

保険実務での活用(耐火性能割引・リスク説明)

認定番号は、構造性能の客観証拠として「耐火性能割引」等の適用根拠になり得ます。加入者へのリスク説明にも役立てましょう。

● 割引・料率区分の裏づけ

T構造/H構造の判定、耐火建築物・準耐火・省令準耐火の適合は、認定番号と仕様書の整合で実証します。家財や付帯設備の扱いは商品差があるため、見積段階で可否を確認します。

● 事故時の説明力向上

延焼の広がりや損傷度合いの評価で、耐火・防火仕様の有無は復旧費・工期に影響します。図面・認定書・施工記録の三点セットを整備しておくと、査定や工程調整がスムーズです。

割引の有無に関わらず、過少保険を避ける適正な保険価額設定、感知器や区画の維持管理、電気設備点検の定期化と併走させることで、家計・事業の中断リスクを下げられます。

耐火・防火認定番号についてのまとめ

耐火=構造・部位・時間、防火=材料の等級。番号は「どこに・どのくらい効くか」を示す共通言語です。

図面・仕様・認定書・施工写真をそろえ、現場仕様と番号の一致を常に確認しましょう。改修や更新時は最新版を再チェックし、誤読・仕様不足・表記不整合を排除。保険の設計・説明・請求でも、認定番号を根拠に安全性と合理性を両立させる運用が有効です。