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盗難

盗難とは、第三者が不法に持ち去る・奪う・侵入して破壊するなどの行為により、建物や家財に損害が生じるリスクの総称。火災保険では、侵入時の破壊(窓・ドア・錠の損傷等)や家財の盗取被害を中心に補償対象となり、契約条件や特約の有無で支払範囲・限度が変わる。

実務では「空き巣」「居空き」「忍び込み」「強盗」など態様に幅がある。暴行・脅迫を伴う強盗は人身事故であり警察対応が最優先。一方、留守中の侵入や器物損壊を伴う盗みは、被害部分の修理費や盗まれた家財の損害が中心となる。保険金の可否は、施錠・侵入痕・被害の立証、そして契約上の対象物の範囲(建物・家財)と支払限度の設定で判断される。

盗難の補償範囲の基本

建物の損壊と家財の損害、二つの軸で考える

建物契約では、侵入のために壊された玄関ドア・サッシ・面格子・錠前・シャッター・フェンス等の修理費が対象になりやすい。家財契約では、現金・貴金属・時計・ブランド品・電化製品・パソコン等の盗取・破壊が中心。家財に加入していなければ、物品の被害は補償外となる一方、建物の破損は建物契約で支払われ得る。現金や貴金属は小額限度や明細証憑の要件が厳しいため、事前の契約設計と証拠化が重要である。

発生しやすい被害例と手口

侵入経路は窓・勝手口・共用部経由が多い。留守情報や単純施錠ミスも狙われる

空き巣(留守中の侵入)

日中の在宅率が低い住宅や夜間の長時間外出を狙い、窓ガラスのクレセント周辺を焼き破り・割り・こじ破りで開錠。被害は窓・網戸・サッシ・雨戸の損傷と、宝飾・ブランドバッグ・小型家電の盗取に集中する。

居空き・忍び込み(在宅中に侵入)

就寝時や入浴時など注意が薄い隙を突いて無施錠の窓・勝手口から侵入。人との遭遇リスクがあるため安全確保を最優先とし、無理な追跡は避ける。被害は財布・スマホ・PC・鍵束など携行品に及ぶことが多い。

破壊型の手口(錠破り・こじ開け・ガラス破り)

古い錠前・単純シリンダー・格子弱点を狙った破壊で短時間に侵入。被害拡大を招きやすく、修理費がかさむ。写真と見積書で破壊の痕跡と修復範囲を明確に示すことが肝要。

集合住宅では、共用部のオートロック通過後に各戸玄関のこじ開け・特殊工具による解錠も。宅配ボックス・駐輪場・トランクルームの被害は、契約上の「保険の目的」外となるケースがあり、規約と保険証券で適用可否を確認する。

支払い要件と必要書類

立証の柱は「届出」「痕跡」「金額根拠」

警察への届出と受理番号

被害が判明したらまず110番または最寄り警察署へ。盗難届の受理番号・届出日・被害品目・被害額の申告控えを取得する。後日の保険請求で必須になる。

被害状況の証拠化(写真・動画・修理見積)

破壊箇所・侵入経路・屋内の荒らされた様子を広角と接写で撮影。修理事業者の見積書は、部位・数量・単価・工法・型式が分かる体裁で依頼する。交換部材の品番や施工範囲が明瞭だと審査が速い。

品目・所有・価格の裏付け

レシート・保証書・箱・シリアル・マイページ購入履歴・写真などで所有と時価を補強。現金・貴金属・美術品は限度や評価方法が厳格なため、契約時の明記や明細化が有効。

保険会社への連絡は「いつ・どこで・何が・どれだけ・どう壊れた/盗られた」を簡潔に。事故状況の経緯、施錠の有無、侵入痕の有無、届出の事実、修理・購入の見込み時期まで伝えると、必要書類の案内がスムーズになる。

支払対象外になりやすいケースと注意点

「無施錠・紛失・所在不明」は典型的な否認理由。家族内の持ち出しや詐欺も対象外

無施錠・鍵の管理不備

窓や玄関の無施錠、合鍵の安易な保管、鍵番号からの不正作成などは自己管理の問題として否認・減額の対象。施錠や侵入痕が立証の基礎になる。

紛失・置き忘れ・所在不明

「無くなっているが盗られたか不明」は盗難認定に至らない。監視映像や第三者の目撃、破壊の痕跡など外部犯行の蓋然性が鍵になる。

居住外・適用外場所の被害

車上荒らし、共用部の個別ロッカー、屋外物置、職場・店舗での被害は対象外になりやすい。契約の「保険の目的」や特約の適用範囲で可否が分かれる。

同居親族・従業員等の故意・横領

家族間・同居人・従業員等の不正は免責とする約款が一般的。外部犯の盗難と区別される。事業用資産は事業保険での手当てが必要。

高額品の限度(例:現金は上限○万円、貴金属・宝石は合計○万円など)は保険会社やプランで異なる。リスクが高い家庭は、家財保険金額・明記物件・セキュリティ要件の見直しを検討する。

再発防止とリスク低減策

防犯は「侵入させない・見せる・記録する」の三層で組む

窓は補助錠・格子・合わせガラス・防犯フィルムでこじ破り耐性を上げ、玄関はCP認定錠・ダブルロック・ドアガード。人感照明・見通しの良い植栽・防犯カメラ・宅配ボックスの運用ルールで「見られる」環境を作る。長期不在時は郵便物の停止・タイマー照明・近隣への一言連絡が有効。貴重品は撮影・台帳化・シリアル控えで回収可能性と立証力を高める。

関連特約と実務のポイント

家財盗難・鍵交換費用・身の回り品の携行中補償などを組み合わせる

標準プランに家財盗難を付けると屋内の物品被害が手厚くなる。玄関破壊後の鍵交換費用や、窓格子・シャッターの緊急仮設に関する費用保険金がセットのプランもある。外出先の盗難に備えるには「携行品損害」タイプの補償(対象・免責金額・減価償却の扱いに注意)を検討。事故後は修理の前に必ず写真を撮り、原状保存→見積→申請→承認→工事の順序で進めると精算がスムーズだ。

盗難についてまとめ

補償は「建物の破壊」と「家財の被害」を区別して設計し、立証の三点セットを揃える

盗難は生活の傷跡と心理的負担が大きい事故である。まずは安全確保と届出、次に痕跡の記録と見積作成、最後に契約条件に沿った請求手続きを行う。家財の高額品が多い家庭や在宅率が低い世帯は、家財保険金額・限度・特約・防犯設備の四点を定期的に見直すことで、支払減額や対象外を避けつつ実効的な備えになる。