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損壊基準

損壊基準とは、自然災害や火災などによって建物が被害を受けた際に、その被害の程度を定量的に判定するための基準を指します。特に地震や水害など大規模災害発生後には、各家庭や事業所がどの程度の被害を受けたのかを正しく区分することが重要であり、保険金の支払いや公的支援金の給付にも直結するため、明確な基準が設けられています。

この損壊基準は内閣府が策定する「災害の被害認定基準」をベースに自治体ごとに運用されており、被災した建物が「全壊」「大規模半壊」「半壊」「一部損壊」という4区分で認定されます。建物の延床面積に対する損壊部分の割合を測り、それぞれの数値基準に従って判定が行われるのが特徴です。さらに例外的な判断手法として、外観目視に基づく簡易認定や、特定事象を基にした特別判定なども認められるケースがあります。

損壊基準の区分と定義

建物の被害レベルは以下の4区分で判定されます。

全壊

延床面積に対して70%以上が損壊した場合に該当します。柱や壁、基礎部分など主要構造部が大きく破壊され、居住や利用が不可能な状態を指します。住宅再建支援金の支給対象となるほか、火災保険の全損判定に直結する重要な区分です。

大規模半壊

損壊割合が50%以上70%未満の場合に該当します。生活継続が困難で大規模な補修が必要と判断されます。住宅再建支援制度や自治体による特例支援の対象となる場合があり、保険金支払いの際も大きな目安となります。

半壊

損壊割合が20%以上50%未満のケースです。屋根や外壁の一部崩落、浸水被害による床上浸水などが典型例となります。修繕を行えば居住継続は可能とされますが、被害規模に応じて保険金や見舞金が支払われます。

一部損壊

損壊割合が20%未満の場合です。屋根瓦の一部破損、外壁の軽微なひび割れ、雨どいの破損などがこれにあたります。被害は限定的であり、火災保険でも一部損の支払割合(例:5%)が適用されることがあります。

損壊基準の判定方法

数値判定と例外的な外観判定が併用されます。

数値による損壊割合判定

基本的には延床面積に対する損壊部分の面積比率で判断されます。例えば床面積100㎡の住宅で70㎡以上が損壊すれば全壊と認定されます。被害範囲を図面や現地調査により測定し、数値的に明確に線引きします。

外観からの目視判定

地震や水害で外壁が大きく傾いた、屋根がほぼ落下したなど、一目で居住困難と判断できる場合は数値計算を省略して全壊と認定することもあります。自治体職員が現地調査を行い、被災者生活支援を迅速に進めるための措置です。

特定事象に基づく特別判定

津波で基礎ごと流失した場合や、土砂崩れにより建物の大半が埋没した場合など、通常の損壊割合では測定困難なケースでは特別基準が適用されます。これにより支援の迅速化が図られます。

損壊基準と保険・公的支援との関係

損壊基準は火災保険や地震保険、公的支援金制度に直結します。

火災保険・地震保険の支払い

火災保険では全損・大半損・小半損・一部損という支払区分があり、損壊基準の判定結果に応じて所定割合の保険金が支払われます。地震保険では全損で100%、大半損で60%などとあらかじめ定められており、損壊判定が直接的に影響します。

公的支援金との連動

住宅再建支援制度では、全壊や大規模半壊と認定された世帯が支援金の対象となります。被害認定調査は自治体職員によって行われ、その結果が支援金支給の可否を決定します。したがって住民にとって損壊基準の理解は極めて重要です。

融資や税制優遇への影響

全壊や大規模半壊と認定されると、自治体や金融機関が提供する災害復旧融資や、固定資産税の減免措置が適用される場合があります。生活再建の速度を左右するため、判定結果は経済的にも大きな意味を持ちます。

損壊基準についてのまとめ

損壊基準は、災害時に被災建物を適切に評価し、保険金支払いや公的支援を迅速かつ公平に行うための指標です。

延床面積に対する損壊割合を基準とする数値判定を基本としつつ、外観目視や特定事象に基づく例外的な判定も導入されています。これにより、迅速な支援と公平な補償を実現しています。火災保険や地震保険、公的支援制度との関係も深いため、住民自身が損壊基準を理解しておくことは極めて重要です。災害が頻発する現代社会においては、事前に基準を知り、備えることが生活再建への第一歩となります。