建築年割引
建築年割引は、地震保険において「1981年6月1日以降に新築(確認)された住居用建物」に適用される10%の保険料割引で、地震保険は単独加入不可のため火災保険とセットで付帯するのが前提です。
この割引の背景には、1981年6月1日から適用された新耐震基準があります。新基準により、建物は大地震時の倒壊・崩壊リスクを抑える設計が求められ、被害想定が低減されます。割引の適用可否は、登記事項証明書(表題部)に記載の新築年月日や建築確認済証・検査済証などの確認書類で判定します。対象となるのは火災保険に付帯する地震保険の「建物」と、当該建物に収容される「家財」で、重複割引は不可(免震・耐震等級・耐震診断等の他割引との併用はできず、もっとも有利な一つを選択)という運用が一般的です。
適用要件と対象範囲
適用条件は「1981年6月1日以降に新築(建築確認)された住居用建物」で、木造・非木造や戸建・共同住宅を問いません。併用住宅も、住居部分に付帯する地震保険であれば対象です。
判定の基準日
基準は新耐震施行日の1981年6月1日です。この日以降に建築確認を受け新築された建物が対象となります。登記上の「新築年月日」や、建築確認済証・検査済証の交付日・新築年月をもって判断します。
家財への適用
家財の地震保険は、対象建物が建築年割引の要件を満たす場合に同様の割引が適用されます。同居世帯の生活動産が当該建物に収容されていることが前提です。
併用住宅・長屋・アパート等
店舗併用住宅や長屋・共同住宅(分譲・賃貸を含む)も、住居として使用される建物であれば原則対象です。棟全体の新築年月で判断するケースが多く、専有部分のみのリフォームでは建築年割引の対象にはなりません。
1981年5月31日以前の建築で大規模改修を行っていても、建築年割引は「新築年月」に基づくため原則適用外です。その場合は他の耐震関連割引(耐震診断や耐震等級、免震等)を検討します。
必要書類と確認方法
加入手続き時に、建築年の確認ができる公的・公的準拠の書類を提出します。最も一般的なのは登記事項証明書(表題部)ですが、建築確認関係書類も有効です。
主な確認書類
1. 登記事項証明書(表題部)新築年月日
2. 建築確認済証・検査済証(新築年月の確認)
3. 固定資産税課税台帳・評価証明書(新築年の記載がある自治体様式)
4. 住宅性能評価書や設計住宅性能評価(新築年月・耐震等級が読み取れる場合)
入手先と実務ポイント
登記事項証明書は法務局・オンライン請求で取得可能です。建築確認済証・検査済証は保管が失われていることもあるため、まず登記での確認を優先します。共同住宅では管理組合・管理会社が検査済証の写しを保管していることがあります。
書類が見当たらないとき
登記の新築年月日が読めれば足ります。どうしても確認できない場合は、保険会社所定の確認方法(自治体証明や代替資料)を案内されることがあります。提出前に個人情報のマスキング要否を代理店・保険会社へ確認すると安心です。
万一、書類記載と実際の入居時期が異なっても、判定は「新築年月」で行われます。登記の表題部や検査済証の記載に誤りが疑われる場合は、発行元での訂正・再発行手続きを検討します。
他の耐震割引との関係と注意点
地震保険の耐震関連割引は重複適用不可です。免震・耐震等級・耐震診断・建築年のうち、条件を満たす最も割引率の高い一つを選びます。
代表的な割引メニュー
免震建築物割引(最大50%程度)
耐震等級割引(等級2・3等で10~30%、免震等級相当で最大50%程度)
耐震診断割引(耐震基準適合の診断で10%程度)
建築年割引(1981年6月1日以降新築で10%)
選び方の実務
同時に条件を満たす場合、割引率の高い免震や耐震等級を優先するのが一般的です。証明書の取得コストや手間も加味して、実質的なメリットが最大になる証明方法を選びます。建築年割引は提出資料が比較的容易で、即時性が高いのが強みです。
よくある落とし穴
1981年5月31日以前の建築は建築年割引の対象外で、リフォームや耐震補強の有無にかかわらず原則適用できません。対象外でも、耐震診断の合格や耐震等級の取得で別の割引が使える可能性があります。また、共同住宅では棟単位の新築年で判定されるため、専有部の改装履歴は割引要件に直結しません。
割引率や必要書類の細目は商品改定で見直されることがあります。見積・申込時点の最新条件で再確認し、建物と家財の両方に適用するか、他割引に切り替えるかを事前に比較するのが安全です。
建築年割引についてまとめ
建築年割引は「1981年6月1日以降新築の住居用建物」に適用される地震保険の10%割引で、火災保険に付帯する地震保険が前提、他の耐震関連割引との重複はできません。
ポイントは3つです。
第一に、基準日は1981年6月1日で、新築年月の客観的証明が求められます。
第二に、家財の地震保険も当該建物に収容されるなら同様に割引適用が可能です。
第三に、免震・耐震等級・耐震診断と併用不可のため、もっとも割引率が高く、証明しやすい方法を一つ選びます。
実務では、登記事項証明書(表題部)が最短ルートです。書類が揃わない場合は管理会社・自治体で代替資料を確認し、商品改定の有無も見積時点でチェックします。建築年割引は手軽さと汎用性が魅力のベース割引で、対象外の建物は耐震診断等の別割引を検討することで、最適な保険料に近づけられます。