地震保険料控除制度
「地震保険料控除制度」は、その年に支払った地震保険料の一定額を所得から差し引ける税制優遇で、結果として所得税・住民税が軽くなる仕組みです。
控除の対象は、居住の用に供する建物や生活用動産(家財)を保険の対象とする地震保険契約に支払った保険料です。契約者本人だけでなく、同一生計の配偶者や親族のための契約でも、当該保険料を実際に支払った人に控除が適用されます。会社員は年末調整、自営業等は確定申告で適用し、控除証明書の提出・保存が必須となります。
制度の基本と対象範囲
対象契約の核
居住用の建物・家財を対象とする地震保険契約が基本です。火災保険のみ(地震特約なし)や、事業用・賃貸用専用の物件を対象とする契約は控除の対象外となります。パッケージ契約の場合は、控除証明書に記載された「地震部分の保険料」金額を用います。
誰が控除できるか
同一生計の配偶者・親族の保険契約でも、実際に支払った人の所得から控除可能です。名義と支払者、用途(居住用)の実態が一致していることが重要で、世帯内で複数契約がある場合は、支払者と控除申告者を統一して管理します。
対象となる支払時期
当年中に実際に支払った保険料が対象です。クレジットカードや口座振替の場合は「決済(引落)日」基準で当年・翌年のどちらに属するかが決まります。一時払いで数年分を前納したときは、支払年の全額が当年の控除対象になります。
控除額・上限と計算の考え方
所得税の上限と扱い
地震保険料部分は、その年に支払った金額のうち最大50,000円までをそのまま所得控除できます。旧長期損害保険の経過措置が残る契約がある場合は、別枠で最大15,000円まで合算可能です(適用要件を満たす存続契約に限る)。
住民税の上限と扱い
地震保険料部分は最大25,000円までを所得から控除できます。旧長期損害保険の経過措置は最大10,000円まで合算可能です。いずれも当年に支払った金額がベースとなります。
建物と家財の合算
同一年に支払った地震保険料は、建物・家財を区別せず合算して控除対象額を算定します。複数の保険会社との契約があっても、控除証明書の地震部分を合計し、各上限枠内で計上します。
数値イメージ(例)
①地震保険料30,000円のみ
所得税は30,000円控除
住民税は25,000円控除(超過分5,000円は切捨て)
②地震50,000円+旧長期5,000円
所得税は50,000円+5,000円=55,000円控除(各枠上限内)
住民税は25,000円+5,000円(上限10,000円内)で合計30,000円控除
手続きの実務(年末調整・確定申告)と必要書類
年末調整での流れ(会社員)
勤務先から配布される「保険料控除申告書」の地震保険欄に、保険会社が発行する「保険料控除証明書」の記載どおりに金額・契約情報を転記します。控除証明書(原本または会社ルールに従う電子データ)を提出し、旧長期損害保険の経過措置対象がある場合は、その証明書も併せて提出します。
確定申告での流れ(自営・調整漏れ回収)
確定申告書の該当欄に地震保険料控除額を記載します。e-Taxの場合は控除証明書の提出省略が可能な場合がありますが、提示を求められたときに備えて原本または電子データを保管します。医療費控除や寄附金控除など他の所得控除と併用できます。
必須の証拠書類
保険会社から送付される「保険料控除証明書」が核です。紛失時はマイページからの再発行申請やコールセンターで手配可能です。年末調整期限に間に合わない場合でも、確定申告で控除を回収できます。
よくある不一致と対応
契約名義と支払者、居住用の実態が一致しないと否認リスクが生じます。世帯で契約・支払口座を整理し、誰の所得から控除するかを事前に決めます。年をまたぐ決済は引落日で判定されるため、当年に確実に適用したい場合は決済の余裕を確保します。
ケース別の取り扱い
複数契約の合算
同一年に支払った地震保険料は、同一人が支払った分を合算できます(建物・家財の区別や保険会社の違いは問いません)。世帯で複数の契約がある場合は、実際の支払者にまとめると手続きが簡潔になります。
家財保険を付帯している場合
建物と家財に分かれて保険料が記載されている場合でも、控除計算では「地震部分の合計額」を用います。控除証明書の内訳欄を確認し、地震保険料の合算を誤らないようにします。
中途解約と返戻があるとき
中途解約により保険料の一部が返戻される場合、当年の控除は当年に実際に支払った正味額で判断します。翌年に返戻が入ると、当年の控除と翌年の所得計上が複雑になるため、更新・解約のタイミングは税務面も踏まえて決めます。
対象外となる代表例
火災保険のみ(地震特約なし)、業務用・賃貸用専用の保険契約、国外の保険会社の契約は対象外です。居住の用に供さない別荘・セカンドハウスは用途により対象外となることがあります。
地震保険料控除制度についてまとめ
押さえるべき上限と実務の鍵
所得税は地震保険分で最大50,000円、住民税は最大25,000円まで所得控除が可能です。
旧長期損害保険の経過措置が生きている契約は、所得税で最大15,000円、住民税で最大10,000円を別枠で合算できます。
実務上の要は「控除証明書の確保」「名義・支払者・用途の整合」「支払時期の管理」です。
会社員は年末調整、自営業は確定申告で、漏れがあれば確定申告で回収します。
迷ったときは控除証明書の地震部分の金額どおりに記載し、同一年に支払った分を合算すれば、取りこぼしを大きく減らせます。