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建設会社

建設業の保険設計は「現場リスク」と「事業拠点リスク」を切り分け、物損・賠償・収益の三本柱で重複と漏れを無くすことが要点です。

建設会社は、工事現場・資材置場・倉庫・オフィス・展示場など複数拠点を抱え、火災・爆発・落雷・風災・水災・盗難・破損や第三者賠償まで幅広いリスクに晒されます。現場の事故は建設・土木・組立工事保険等で、オフィスや展示場での事故は企業向けの火災保険等で守るのが基本です。さらに、請負人賠償責任、施設賠償責任、完成後(生産物)賠償、休業に関する補償、業務災害補償、サイバーやデータ、資材運送といった周辺補償を組み合わせることで、工期の遅延や資金繰りの悪化を抑え、信用を維持できます。

補償の全体像

建設会社の補償は「物損」「賠償」「収益・人・情報」の三本柱で整理します。

物損は建物・設備・什器・在庫・資材・工具・重機・仮設物・出来形(工事対象)を対象に、火災や自然災害、盗難、偶発的破損をカバーします。賠償は工事中の第三者損害、施設来訪者事故、引渡し後の欠陥等に起因する事故を射程に入れます。収益・人・情報は、休業関連の補償、業務災害補償、サイバーやデータの保護、受発注やBIM等のシステム停止リスクまで含める発想が重要です。

現場の対策(工事保険群)と拠点の対策(企業向け火災保険群)を分離し、事故地点・作業態様・第三者関与の有無で適用保険を即時仕分けできるよう、社内フローと記録様式を整備しておくと、支払可否の判断が速くなり復旧も加速します。

工事現場のリスクと工事保険

工事保険は出来形・仮設・持込資材を守り、溶接・火気・高所・重機・漏電など現場特有の事故に備えます。

● 建設・土木・組立工事保険の対象

出来形(工事対象物)や仮設物、現場に持込む資材の損害に対して、火災・爆発・落雷・風災・水災・盗難・偶発破損を手当します。大型機械・クレーン・バックホー等は、建設機械保険で個別にカバーしておくと実務上の復旧が早くなります。

● 典型事故と免責設計

溶接・切断火はね、仮設電気の漏電、資材の飛散・落下、型枠・足場の転倒、重機接触・敷地外逸走、水締め・養生不足などが代表例です。免責金額は、小口頻発損害を自己吸収して保険料を抑えつつ、大損は確実に移転できる水準に設定します。

● 請負人賠償との連携

工事中に第三者へ身体・財物損害を与えた場合は請負人賠償責任で対応します。元請・発注者を追加被保険者に指定し、相互求償放棄やクロスライアビリティなどの条項整備で紛争コストを抑えます。道路占用・高所・火気使用など危険作業は限度額を厚めに設定します。

事業拠点(オフィス・展示場・倉庫)の火災保険

拠点の火災保険は建物・設備什器・在庫・屋外設備を分けて保険金額を設定し、再調達価額を基本に評価します。

● 補償範囲の標準

火災・落雷・破裂爆発・風災・水災・盗難・破損を中心に設計します。看板・フェンス・門扉など屋外設備、ショールームのガラス・意匠性設備は特約で手厚くする運用が有効です。資材置場は保管要件(施錠・警備・屋外条件)を満たす運用を前提にします。

● 評価・金額とインフレ耐性

建物・設備は再調達価額、在庫・資材は繁忙期のピーク量を想定した金額を基準にします。過小保険は比例填補により自己負担が発生するため、年次の評価替えや指数連動、自動増額条項の活用でインフレに備えます。老朽設備は時価採用が合理的な場合もあります。

● リスク低減と料率要因

構造級別(耐火・準耐火・木造)、延床面積、夜間無人時間、火気使用の頻度、溶接管理、区画・養生、防炎シート、感知器・スプリンクラー・シャッター、常駐・機械警備、入退室管理、CCTV、資材の刻印・トレーサビリティなどが引受と料率に影響します。記録と教育をルーチン化し、保険料優遇につなげます。

賠償・休業・人と情報・運送の備え

賠償は請負・施設・完成後の三位一体、収益は休業、人的損害は業務災害、情報はサイバーで穴を塞ぎます。

● 賠償責任の整理

請負人賠償責任は工事中の第三者損害に対応します。施設賠償責任保険はオフィスや展示場の来訪者事故に対応します。生産物・完成後作業賠償責任は引渡し後の事故に対応します。契約条件で限度額指定がある案件は、その水準を満たす設計にします。

● 休業に関する補償

火災や風水害で拠点が停止した場合の固定費や粗利益を対象にする設計が有効です。待機期間(免責日数)は復旧想定・代替拠点の可否・資金繰りを踏まえ短縮を検討し、復旧長期化のシナリオでも資金が切れない水準にします。

● 人と情報の補強

業務災害補償は労災上乗せとして、死亡・後遺障害・休業に関する補償を整備します。サイバーは設計データやBIM、受発注システム停止、情報漏えい、身代金要求などを想定し、復旧費用・第三者賠償・事後対応費までカバー範囲を確認します。

● 運送・保管の穴埋め

運搬中の資材・機器は貨物保険や内航・陸送特約で補強します。屋外保管は夜間施錠・防犯・明確な受払記録が支払要件となるため、運用ルールを事前に固めます。工具・計測器は動産総合で「持出し時」も対象化し、車上荒らしの条件も確認します。

設計の実務ポイントと事例

保険金額・免責・限度額は、案件規模・下請構成・資材価格・キャッシュ力で最適化し、毎期見直します。

● 金額・免責・限度額の考え方

建物・設備は再調達価額、在庫・資材はピーク在庫を基準に設定します。重機は相場変動が大きいため年次で評価を更新します。免責は小口頻発損害を自己吸収しつつ、大損は移転する水準に。過小保険回避のため、評価替えや指数連動・自動増額を活用します。

● 契約条項と運用設計

追加被保険者、相互求償放棄、クロスライアビリティ、下請への付保義務、危険負担の帰属などを契約で明確化します。事故発生時の通報・保存・写真・関係者聴取・見積取得・応急措置のフローを標準化し、どの保険に申請するか即断できるようにします。

● 事例(規模・特性別の設計例)

小規模専門工事業者:拠点は企業向け火災保険、現場は案件単位または包括の工事保険、請負人賠償は2億〜3億、施設賠償は1億、工具は動産総合、休業は固定費中心。中堅総合建設:拠点の火災保険+大型倉庫、工事は年間包括と建設機械、請負人賠償5億〜10億、完成後賠を付帯、発注者を追加被保険者化、資材の陸送貨物、休業は粗利益6〜12か月、サイバーで設計・受発注停止に備えます。展示場重視:ガラス・意匠設備・看板の破損特約、イベント時は臨時場所特約、来訪者事故に備え施設賠償を厚め、売上影響を考慮して待機期間を短縮します。

よくある落とし穴は、現場事故を拠点用の保険に出す、またはその逆による不担保、完成後の賠償の失念、屋外資材の盗難条件不充足、評価ズレによる比例填補、待機期間が長すぎる設計です。社内ルールの明文化と教育・記録で回避できます。

建設会社についてまとめ

現場は工事保険、拠点は企業向け火災保険、賠償は請負・施設・完成後の三本立てで漏れをなくします。

建設会社のリスクは、事故地点・作業態様・第三者関与の有無で適用保険が変わります。工事保険は出来形・仮設・資材を守り、企業向け火災保険はオフィス・展示場・倉庫を守ります。賠償は請負・施設・完成後で網羅し、休業に関する補償、業務災害、サイバー、貨物まで広げれば、資金繰りと信用を守れます。評価替え・免責・限度額の最適化、契約条項と運用フローの整備、リスク低減策の継続で、保険料効率と支払確度の両立が可能になります。