簡易評価
火災保険や家財保険で設定する保険金額を決める際に再調達価格の目安を素早く把握するための算出方法が簡易評価です。
専門家の詳細評価や実測を待たずに建物や家財のおおよその金額感をつかむために用いる手法で費用や時間を抑えつつ相場から大きく外れない金額設定を目指します。契約前の当たりを付ける場面や見直し時の初期判断に適しています。
簡易評価とは
再調達価格を前提に建物は構造や延床面積などの基礎データを家財は世帯人数や年齢層などの指標を使って概算します。
建物は新築時の取得金額を手掛かりにした補正または延床面積×単価方式などで算出します。家財は全品目を拾い出す方法のほか世帯構成から平均的な家財額を推定する簡易評価表を用いる方法があります。オンラインの簡易計算ツールも普及しており加入検討時の参考として手軽に使えます。
建物の簡易評価
建物は再調達価格の考え方で同等の建物を今建て直す場合の概算額を導くのが基本です。
代表的なのは延床面積×構造別単価の方式で木造か準耐火か耐火か戸建か共同住宅かといった構造区分で単価が変わります。新築時の購入額が分かる場合はその金額を現在価額に補正する方法もあります。補正には物価や建築コストの変動地域差設備仕様のグレードなどを加味します。付帯設備や外構を対象に含めるかどうかで金額が変わるため門扉やカーポート太陽光発電床暖房ビルトインガレージなどの扱いを事前に確認します。マンションの専有部分は専有面積×単価を基準とし管理規約上の専有範囲と共用範囲の切り分けに注意します。
家財の簡易評価
家財は日用品から家具家電衣類趣味嗜好品まで幅広く含まれるため世帯人数と年齢層からの概算が実務でよく用いられます。
小さな子どもが多い世帯や高額家電を複数保有する世帯嗜好品が多い世帯は平均より家財額が増えやすく単身やミニマル志向の世帯は下がる傾向があります。高額品は別枠や明細化が必要なことがあるためブランドバッグ時計宝飾品楽器コレクション類美術品などは個別に把握して上積みを検討します。
再調達価格と時価の違い
再調達価格は同等品を今新たに購入または建築するための額で時価は再調達価格から経年劣化を差し引いた額です。
多くの火災保険の家財や建物は再調達価格基準で支払われる設計が一般的ですが約款や特約によっては時価となる場合もあります。評価の前提と保険金支払い基準を合わせておくことが重要です。
データの集め方のコツ
建物は登記事項証明書や建築確認通知書や設計図書や売買契約書から構造や面積や竣工年の根拠を拾うのが基本です。
マンションは間取り図やパンフレットの専有面積表記も参考になります。家財は大型家電や家具を中心に主要アイテムの型番や購入時期や概ねの購入金額をメモしレシートや保証書や通販履歴があれば保存します。オンラインの簡易ツールを併用し結果のスクリーンショットを残すと見直しの比較がしやすくなります。
活用例
見直しや増改築や設備追加や世帯属性に応じて評価前提を整理し保険金額の調整に活かします。
・見直しと増改築の反映ではリフォームや増築や太陽光発電や蓄電池の追加で再調達価格が上がった場合に簡易評価で差額を把握し保険金額の見直しを行います。工事内容の見積書や請負契約書があれば費用を上乗せして現在の水準に補正します。
・マンション世帯の家財額設定では世帯人数と年齢層の簡易評価表を基準にしゲーム機や大型テレビやパソコンやオーディオなどの所有状況で加点します。クローゼットの衣類点数やスーツやドレスやブランドバッグの保有数が多ければ増額を検討します。
・高額品の別記載では腕時計やジュエリーや楽器や美術品などは上限や時価扱いのスキームが混在するため簡易評価の総額とは別に明細化します。写真や購入証憑を保管し必要に応じて明記特約を検討します。
・店舗兼住宅や在宅ワークでは住宅部分と営業用資産の線引きを整理し建物は構造と面積で設備や什器は別途把握します。家財は生活用と事業用で性質が異なるため保険の対象範囲を確認した上で簡易評価の前提を分けます。
注意点
過少保険と超過保険の回避や入力定義の厳密さや対象漏れ防止や支払い基準の整合が重要です。
・過少保険に注意では簡易評価が低すぎると損害時に比例てん補となり一部しか支払われません。建築コストや物価が上がっている局面では過去の取得額ベースの据え置きにより乖離が生じやすく最新の単価感に補正します。
・超過保険の無駄では再調達価格を超えて高額に設定しても支払時の上限は再調達価格であるため保険料の無駄を避け根拠ある水準に収れんさせます。
・構造区分と面積の取り違いでは木造を準耐火や耐火と誤認し延床と施工面積を混同しマンションの専有面積と壁芯面積を混在させないよう資料の表記単位や定義を確認します。
・付帯設備と外構の漏れでは太陽光や蓄電池や床暖房やビルトイン食洗機や造作収納や外構や門塀やカーポートの含否を整理してから評価します。
・家財の高額品の扱いではブランド品や骨董や楽器やコレクションは平均的な簡易評価額に含まれにくく別枠や明記が必要な場合があるため写真と購入記録を保存し必要に応じて追加の補償を検討します。
・ネット簡易ツールの前提では全国平均単価や標準仕様が前提となることが多く地域の建築単価や仕様グレードや輸送費や職人需給の影響は完全には反映されないため最終的には代理店や保険会社の基準に合わせて調整します。
・支払い基準の確認では契約が再調達価格基準か時価基準か臨時費用や残存物片付け費などの費用保険金の有無や免責金額の設定を確認し評価額と支払いの前提が矛盾しないようにします。
簡易評価の進め方(実務の流れ)
建物は延床面積と構造と竣工年と設備の特徴を集め家財は世帯人数と年齢層から基準額を出し特性で調整します。
建物は延床面積×構造別単価で概算し地域係数や仕様の違いを加減算します。新築取得額が分かる場合はそれをベースに現在の建築コスト指数を踏まえて補正します。家財は世帯人数と年齢層から簡易評価表で基準額を出し主要家電や家具や衣類や嗜好品の特徴で上下を調整します。高額品は別リスト化して合算し必要に応じて明記や特約を検討します。算出根拠はスクリーンショットやメモで残し後日の増減や契約書作成時に参照できるようにします。
簡易評価についてのまとめ
簡易評価は短時間で再調達価格の目安を把握し過少保険と超過保険を避けるための実務的な手段です。
建物は延床面積と構造と設備の特徴を基に家財は世帯構成と保有品の特徴で調整し必要に応じて高額品を明細化します。オンラインの簡易ツールは便利ですが地域の建築単価や仕様差は反映しきれないため最終的には根拠資料と支払い基準を突き合わせて確度を上げます。定期的な見直しと増改築の反映を行い十分な補償が受けられる適正な保険金額を維持します。