価格協定保険特約
建て替えも買い替えも「時価」じゃ足りない!?
補償額を調整する特約の正体とは
火災保険では建物や家財の評価を「時価」で行うのが一般的です。
しかし時価=経年減価を差し引いた価値のため、実際の建て直し・買い替えに必要な金額を大きく下回ることがあります。
こうしたギャップを埋めるのが「価格協定保険特約」です。保険会社とあらかじめ再調達に必要な金額(再取得価額)を基準として保険金額を取り決めることで、
万一のときも自己負担なしで現状回復・再建を目指せます。中古・築古・設備多めの物件ほど恩恵が大きく、事業継続の観点でも有効です。
保険の評価基準を変える特約とは?
時価じゃなく「再調達価額」を基準にする仕組み
価格協定保険特約は、火災保険の保険金額を建物の新築費用や家財の再取得費用など、 再調達価額に基づいて設定できるようにする特約です。一般的な時価評価では古くなるほど補償が目減りしますが、 本特約があれば大規模損害でも十分な金額での補償を受けやすくなります。
幅広い火災保険に付帯できる
付帯可能な代表例:
● 住宅総合保険
● 住宅火災保険
● 店舗総合保険
● 普通火災保険
自宅だけでなくテナント物件や事業用建物でも活用できます。
適用手続きの流れ(概要)
物件情報・延床面積・構造・仕様等を基に保険会社が再取得価額を評価→見積提示→契約時に協定方式を選択します。 更新時は相場変動や増改築を踏まえて見直しを行うのが実務上のベストプラクティスです。
保険料はどうなる?追加費用の有無
本特約は原則として割増保険料は不要です。再取得価額の評価に応じ、以下いずれかで保険金額を設定します。
● 評価額の80%(標準方式)
● 評価額の60%(簡易方式)
方式の選択は保険会社・物件状況により異なります。
活用例とその効果
築古住宅の火災でも全額補償が受けられる!
築30年の木造住宅が全焼したケース
時価評価では経年控除により約400万円しか出ない想定でしたが、価格協定保険特約の適用により 新築費用1,800万円まで補償され、自己負担なく再建できた、という運用実例が報告されています。
マンションでの水害・漏水事故
給排水設備の事故で内装・造作・家電が広範囲に被害。時価だと家電・家具が目減りしますが、 本特約なら同等品の再購入費を基準に補償されるため、実費負担を圧縮できます。賃貸募集の再開も早まります。
事業用物件にも有効
飲食店などで厨房設備や什器が損傷した場合は再導入コストが高額です。 価格協定保険特約なら新品再導入費を基準に補償され、営業再開までの時間短縮・資金負担の軽減につながります。
注意点と落とし穴
すべての保険に付けられるわけではない
共済や簡易型保険では非対応な場合あり
県民共済・コープ共済・団体契約などは金額設定が限定的な場合があります。加入前に特約の付帯可否を確認してください。
協定額のメンテナンスが必要
物価・人件費・資材費の変動、増改築・用途変更があると再取得価額が乖離します。更新前に協定額の再評価を推奨します。
自動付帯ではない点に注意
本特約は申込時に明示追加が必要です。既契約に自動付帯は基本なし。 補償が「時価」か「再取得価額」かは設計書・約款・保険証券で確認しましょう。
価格協定保険特約についてまとめ
再建・再調達の実費をカバーするための、頼れる選択肢
価格協定保険特約は、時価補償の目減りで不足しがちな建て直し費用や家具・設備の再購入費を補う実務的な解決策です。 保険料は原則据え置きのまま自己負担リスクを低減でき、個人・法人を問わず費用対効果に優れます。 ただし付帯可否・協定方式・評価額は商品や物件条件で変わるため、更新や改修のタイミングでの定期見直しと、 書面(設計書・約款・証券)での記載確認を徹底してください。